私たちの暮らしは、実は日常のあらゆる場面で「民法」という法律に支えられています。スーパーで買い物をする、友人にお金を貸す、アパートを借りて生活する——こうした行為の背景には、必ず民法が存在しているのです。
今回は、「民法とは何か?」という基本から、その重要性、そして近年の改正についてまで、わかりやすくご紹介します。
1.民法とはどんな法律?
民法は、一言でいえば「私人同士の権利関係を定めた法律」です。
私人とは、国や自治体といった公的な存在ではなく、個人や会社といった私的な存在を指します。つまり、民法は「私たち一般人同士の間に発生する問題」を扱うルールブックなのです。
日本の民法は、1896年(明治29年)に制定され、以降100年以上にわたって使われ続けています。民法は大きく分けて5つのパートに構成されています。
①総則(全体に共通する基本ルール)
②物権(所有権など物に関する権利)
③債権(契約や不法行為に関するルール)
④親族(結婚・離婚・親子関係など)
⑤相続(遺産に関するルール)
このうち、特に私たちの生活に直結しているのが「債権」と「物権」のパートです。たとえば、友達にお金を貸して返してもらえなかった場合、債権に基づいて返還を請求することになりますし、家を買ったときには、物権に基づいて所有権を得ることになります。
2.民法がなぜ重要なのか?
民法は、個人の自由を尊重しながら、社会の秩序を維持するために存在します。たとえば、契約自由の原則によって、基本的に誰とどんな内容の契約を結んでも良いとされています。しかし、それが極端になり、弱い立場の人が不利な契約を結ばされる場合もあるでしょう。そこで民法には、一定の場合に契約を無効にしたり、取り消したりする救済手段も用意されています。
また、民法は「裁判の基準」としても機能します。トラブルが起こったとき、裁判官は民法の条文に基づいて判断を下します。もし民法がなかったら、何をもって公平・不公平とするかも曖昧になってしまうでしょう。
3.近年の民法改正について
日本の民法は長らく大きな改正がありませんでしたが、21世紀に入り、現代社会に合わせる形で大きな見直しが行われています。特に注目すべきなのは、以下の2点です。
①債権法改正(2020年施行)
契約に関するルールが大幅に見直されました。たとえば、今までは「請負契約(工事などを依頼する契約)」に関する細かなルールが職人文化の中にしか明文化されていませんでしたが、改正によって明確化され、トラブルを未然に防ぐ助けとなっています。
また、消滅時効(債権を請求できる期間)も一律「原則5年」に統一され、わかりやすくなりました。
②相続法改正(2019年施行)
超高齢化社会を見据えた改正も行われています。たとえば、亡くなった配偶者が住んでいた家に、残された配偶者がそのまま住み続けるための「配偶者居住権」が新設されました。これにより、高齢の配偶者の生活が保障されやすくなりました。
最後に
民法は、普段あまり意識されることのない存在かもしれません。しかし、私たちの生活のあらゆる場面で密接に関わっており、トラブルが起きたときには心強い味方となります。
時代に合わせて進化し続ける民法。これからも私たちの暮らしを支える重要なルールとして、注目していくべき存在です。